近年、中堅/中小企業においても「キャッシュフロー経営」が重要だと言われている。
キャッシュフローという言葉は知っていると思うが、そもそもキャッシュフローとは何であろうか?
キャッシュフローとは、お金の流れとその額を意味している。
下表は、「経済産業省の財務理論に関する報告書」から引用したものであるが、一般的にお金の流れ(キャッシュフロー)は、「調達」「投資」「回収」「分配」の4つに分類される。
※引用:経済産業省「キャッシュフロー経営」
以下にて説明しよう。
①調達のキャッシュフローとは
銀行借入や株主からの投資を受けて、企業は事業を行うための資金を調達する。
どこからどのくらい資金調達を行っているかを調達のキャッシュフローという。
②投資のキャッシュフローとは
調達した資金を、設備投資や運転資本に投資して企業は事業を行う。
何にどのくらい資金を投資しているかを投資のキャッシュフローという。
③回収のキャッシュフローとは
企業が営業活動においては、物の購入や人件費の支払いといった支出と、売上に伴う収入(入金)が発生する。
営業活動によって生じた額を回収のキャッシュフローという。
④分配のキャッシュフローとは
営業活動から回収された資金を、資金調達の際に要した借入の金利・元本の支払いや株主への配当、または内部留保に当てることを分配のキャッシュフローという。
尚、財務理論では、
①と④を「財務活動によるキャッシュフロー」
②を 「投資活動によるキャッシュフロー」
③を 「営業活動によるキャッシュフロー」
という。
つまり、キャッシュフローをまとめると、お金の流入、流出のことをいい、
財務活動によるキャッシュフローとは、
借金(返済)、増資(配当金支払い)に伴うお金の流入(流出)のことをいい
投資活動によるキャッシュフローとは、
設備投資、有価証券投資、企業買収等に伴うお金の流出のことをいい、
営業活動によるキャッシュフローというのは、
事業活動を通じて実際に稼いだお金のことをいう。
それでは、「キャッシュフロー経営」とはどのようなものなのか?
キャッシュフローの特徴は、
(1)財務会計上の損益は会計処理方法にて変化するが、キャッシュフローは事実を表すので客観的に判断できる。
(2)B/Sは資金の動きの「結果」、P/Lはその「原因」を示すのに対し、CFはこれらの「プロセス」を把握できる。
(3)投下資本に対するリターンの動きがキャッシュベースで把握できる。
(どのくらい儲かっているのか、端的に分かる)
以上が特徴であるが、実際の経営ではどのように使うのか解説しよう。
キャッシュフローの判断手法を説明すると長くなるので今回は割愛するが、各種の判断手法を用いて、キャッシュフローでの評価指標に注目する。
企業はこの評価指標を用いて、“本当に儲かる事業への投資判断や投資後の評価”を行ったり、“本当に儲かる施策の判断と実行”を行うことに活用できるのである。
このように事業活動の一連の流れを、お金の流れとその額によって考え、経営を行うことを「キャッシュフロー経営」と呼ぶのである。
それでは、なぜ「キャッシュフロー経営」に注目する必要があるのだろうか?
中小企業においては、取り巻く環境の変化や事業投資の成否が経営に大きな影響を及ぼす。
いつ銀行からの融資が難しくなるかもしれない状況の中で、新規投資評価や業績評価にてリターンを確実に把握し、経営の安定化や経営基盤の強化を図る経営、つまり「キャッシュフロー経営」が重要になってくるのである。
どの企業においても倒産リスクが存在する。
資金調達の方法から、何に投資して、どのように回収していくのかを考える「キャッシュフロー経営」に注目されたい。